SaaSの月額費用が高い?代替手段の比較と買い切りツールへの移行判断基準を解説

梶田洋平
この記事を書いた人:梶田 洋平(AIzen株式会社 代表)
IT/AIコンサル・SEとして経営層直下の全社横断プロジェクトを多数主導。
中小企業からサンリオなどの大手企業まで、計100社以上へのAI・DX支援実績あり。
AI(Antigravity等)導入設計/開発からkintone等のSaas開発・運用伴走が得意領域。
「予算が少ない」「既存の業務を変えずにデジタル化したい」そういったお客様のご状況を踏まえて、最適な提案を進めることを心掛けています!

本記事を読めば、SaaSのライセンス最適化とオープンソース移行だけで年間36万円以上の固定費を削減した具体的な手順を、自社の状況に合わせて再現できます

買い切り型ツール・オープンソース・自社開発という3つの代替手段を費用対効果で比較し、解約すべきSaaSと継続すべきSaaSの境界線まで解説します。

目次

SaaSの月額費用が高いと感じる3つの原因

「SaaSに払っている金額が経営を圧迫している」と感じる企業は増えています。その背景には、SaaSの料金体系がもつ3つの構造的な落とし穴があります。

ユーザー数課金で利用頻度の低い社員分もコストが発生

多くのSaaSは、「1ユーザーあたり月額○○円」というシート課金を採用しています。社員全員にアカウントを配布すると、コストは人数に線形で跳ね上がります。

厄介なのは、「使っていないユーザー分」も満額請求される点です。アカウントはあっても月に一度もログインしていない社員がいる場合、そのライセンス費用はすべて無駄です。社員数が増えるほど、利用実態と支払額の乖離も広がっていきます。

使わない機能が含まれた上位プランを契約している

SaaS各社は、「Business」「Enterprise」といった上位プランを推奨しますが、実際に使っている機能はBasicプランで十分というケースが少なくありません。上位プランに含まれる「高度なレポーティング」「SSO連携」「ロールベース権限管理」などの機能は、一度も使わないまま毎月課金され続けます。

導入時に「将来のために」と上位プランを契約した結果、機能の8割が未使用のまま数年間払い続けているという状況が多く見られます。

複数SaaSの機能が重複し二重払いになっている

部門ごとに異なるSaaSを導入した結果、同じ機能に対して複数のSaaSで重複課金しているケースもあります。例えば、営業部門がSalesforce、マーケ部門がHubSpot、カスタマーサポート部門がZendeskを使っているような状態です。

それぞれに「顧客データベース」「メール配信」「タスク管理」機能が内包されているため、1つの機能に対して3重で払っていることになります。全社のSaaS棚卸しを行わない限り、この重複は可視化されません。

SaaSの代替となる3つの選択肢と費用比較

SaaSの月額が重くなってきた場合、代替手段は大きく3方向に分かれます。

代替手段初期費用月額費用運用要件向いているケース
買い切り型ツール数十〜数百万円ゼロ(保守費のみ)軽微な修正対応業務フローが固定・長期利用
オープンソースのセルフホストサーバー構築工数サーバー代のみ(月数千円〜)インフラ運用知識が必要GUI運用を残しつつコスト削減
自社専用ツールのカスタム開発数十〜数百万円クラウド利用料のみ(月数百円〜)要件定義への協力既存SaaSが業務に合わない

選択肢1:買い切り型ツールへの移行(初期費用のみ・月額ゼロ)

要件を固めて一度開発・納品してもらい、月額課金を完全にゼロにするアプローチです。SaaSのように機能追加は簡単には行えませんが、業務フローが安定している領域では最もコスト効率の高い選択肢になります。

初期費用として数十万〜数百万円が発生しますが、SaaSの月額が10万円を超えている場合、1〜2年で初期投資を回収できるケースが多くあります。その後は純粋にコスト削減分が経営利益として残ります。

選択肢2:オープンソースツールのセルフホスト(月額大幅削減)

商用SaaSとほぼ同等の機能をオープンソースで実現する選択肢です。プロジェクト管理ならPlane・OpenProject・Taiga、チャットならRocket.Chat・Mattermost、CRMならEspoCRM・SuiteCRMなど、用途ごとに選択肢が揃っています。

AWS EC2やさくらのクラウドなどの小さなインスタンスで動かせば、月額数千円のサーバー代のみで運用可能です。GUI操作の使用感はSaaSに近く、移行後の学習コストも小さく済みます。ただし、サーバーの構築・アップデート・バックアップ・セキュリティ対応を自社で行う必要があり、インフラ運用の知識が前提になります。

選択肢3:自社専用ツールのカスタム開発(業務に完全フィット)

既存SaaSでは業務フローが合わない場合に、自社の業務にフィットしたツールをゼロから開発する選択肢です。SaaSの汎用機能に業務を合わせるのではなく、逆に業務にツールを合わせることで、運用効率が大幅に向上します。

開発費は発生しますが、汎用SaaSで解決できない独自業務が多い企業ほど投資対効果が高まります。AIzenが提供する買い切り型の自社専用ツール開発は、この選択肢に該当し、月額課金を構造的にゼロ化する設計が可能です。

SaaSを解約すべきか判断する3つの基準

「どのSaaSから解約・代替を検討すべきか」を判断する基準を3つ整理します。

基準1:実際の利用ユーザー数とライセンス数の乖離

SaaSの管理画面で過去90日間のアクティブユーザー数を確認します。ライセンス数が30で、90日以内にログインしたユーザーが10人しかいない場合、残り20ライセンスは完全に無駄です。この乖離が大きいSaaSから最初に手を付けると、即効性のあるコスト削減につながります。

特に、全社一斉導入したSaaS(プロジェクト管理・コミュニケーション系)はこの乖離が大きくなりがちです。利用実態を管理画面の数値で可視化するのが第一歩です。

基準2:月額費用と業務削減効果の費用対効果

月額費用とそのSaaSによる業務削減時間を比較し、1時間あたりの削減コストが人件費の時給を上回っていないかを確認します。計算式は以下の通りです。

月額費用 ÷ 月間削減工数(時間)= 1時間あたりの自動化コスト

月額5万円のSaaSで月20時間の工数を削減している場合、1時間あたりのコストは2,500円。担当者の時給が3,000円以上であれば続ける価値がありますが、1,500円なら割高です。このコスト効率が悪いSaaSは、代替手段への移行候補になります。

基準3:代替手段への移行コストと回収期間

代替手段への移行には、初期費用・データ移行・社内トレーニングのコストが発生します。これらを含めた総コストと、SaaS継続時のコストを比較して回収期間を計算します。

回収月数 = 移行総コスト ÷ 月額削減額

回収期間が12〜18ヶ月以内に収まる場合、移行する価値が十分にあります。月額SaaSの支払総額が「3年間の移行総コスト」を上回る場合は、移行推奨というのが実務上の目安です。

【実務で起きた事例】SaaSのライセンス最適化とOSS移行で年間36万円以上を削減した方法

30名分のライセンスのうち20名が未使用だった問題の発見方法

私が支援した社員30名の中小企業では、全社向けにプロジェクト管理SaaSを導入していました。1ユーザーあたり月額1,500円、30名分で月額45,000円、年間54万円の固定費になっていました。

違和感を覚えて管理画面で過去90日のログイン履歴を調べたところ、日常的に利用しているのは約10名のみ。残り20名は「アカウントはあるが直近90日以内にログインなし」の状態でした。各部門の管理者にヒアリングすると、「全社導入されたから開いてみたが、自分の業務では使わなかった」という声が多数でした。

まずやったことは、ライセンス数を10名分(実稼働ユーザー数)に削減する契約変更です。この最適化だけで月額費用が45,000円から15,000円に下がり、年間で36万円のコスト削減を達成しました。SaaSを解約する前に、まずライセンス数を実態に合わせるだけで効果が出るケースがあります。

利用頻度が高い機能に絞りオープンソースツールに移行した手順

さらに分析を進めると、残り10名が使っている機能も、「タスク管理」「進捗共有」「コメント機能」の3つに集中していました。SaaSの高機能な部分(カスタムワークフロー・自動化・レポーティング)はほとんど使われていませんでした。

そこで、オープンソースのプロジェクト管理ツールPlaneをAWS EC2でセルフホストし、移行を検討しました。移行前後の比較は以下の通りです。

項目SaaS継続時ライセンス最適化後OSSセルフホスト移行後
月額費用45,000円(30名)15,000円(10名)約3,000円(サーバー代のみ)
年間費用540,000円180,000円約36,000円
初期費用0円0円約40万円(構築・データ移行)
年間削減額360,000円504,000円

段階的な最適化により、年間54万円の固定費が年間3.6万円にまで圧縮できました。OSS移行の初期投資40万円も1年以内で回収できる見込みです。ただし移行には、サーバー構築・バックアップ運用・アップデート対応といった運用負荷が新たに発生するため、社内にインフラ担当がいる場合に限って採用する判断をしました。

SaaSを解約すべきでないケース(セキュリティ要件・API連携・ベンダーサポート)

ただし、すべてのSaaSが解約・代替対象になるわけではありません。以下の条件に当てはまるSaaSは、月額課金を支払ってでも継続するほうがトータルコストで優位になります。

第一に、ISO27001・SOC2などの厳格なセキュリティ認証が求められる業務。ベンダーの認証取得コストを自社で負担することは現実的でないため、認証済みSaaSを使うほうが安全かつ安価です。

第二に、外部システムとのAPI連携が頻繁に変わる業務。SaaS側が常にAPIをメンテナンスしてくれるため、自社で保守する負担から解放されます。

第三に、ベンダーのサポート対応が業務停止時の復旧に直結する業務。自社運用だと障害時に業務が停止するリスクが高く、24時間サポート付きのSaaSが適しています。

上記3条件のどれかに当てはまるSaaS(会計・給与計算・決済・電子契約など)は、代替よりも「ライセンス最適化」に留めるのが賢明です。

SaaSコスト見直しの実践ステップ

SaaSコスト削減を成功させるためには、以下の3ステップで進めることをおすすめします。

ステップ1:全社のSaaS契約を棚卸しし利用実態を可視化

最初にやるべきは、全社で契約しているすべてのSaaSの一覧化です。情報システム部門が把握しているSaaSだけでなく、各部門が独自に契約している「シャドーIT」も含めて洗い出します。「契約名・月額費用・ユーザー数・用途・契約担当者」の5項目で棚卸しすると、全体像が把握できます。

次に、各SaaSの管理画面で過去90日のアクティブユーザー数を調べます。契約ユーザー数とアクティブユーザー数の差分が、即座に削減可能な金額です。この段階で、削減候補の優先順位が自然と浮かび上がります。

ステップ2:削減効果が大きいSaaSから代替手段を検討

棚卸しが完了したら、月額費用が大きく・利用実態との乖離が大きいSaaSから順に代替手段を検討します。この順序で着手すると、少ない工数で大きな削減効果を得られます。

検討の際は、本記事で示した3つの選択肢(買い切り型・オープンソース・自社開発)を、SaaSの用途と自社のITリソースに合わせて選定します。プロジェクト管理・チャット・CRM・ストレージといった汎用SaaSはオープンソース代替が豊富にあり、業務特化型SaaSほど自社開発が選択肢に入りやすい傾向があります。

ステップ3:段階的に移行しリスクを最小化する

SaaS移行を一斉に行うと、業務停止リスクと現場の混乱が発生します。必ず段階的に進めます。

最初の3ヶ月で、最も削減効果が大きく・業務影響が小さい1つのSaaSを対象に並行運用を開始します。既存SaaSと新ツールの両方にデータを残しつつ、新ツールでの運用を試します。

問題がないことを確認した上で完全切り替えを行い、その後別のSaaSの見直しに着手します。1年で2〜3つのSaaSの見直しが現実的なペースで、一気に全SaaSを移行しようとすると失敗します。

まとめ

SaaSの月額費用が高いと感じたら、まずライセンス最適化・次に機能棚卸し・最後に代替手段への移行という順序で進めるのが鉄則です。

多くの場合、ライセンス数の最適化だけで年間数十万円規模の削減が可能で、さらにオープンソースや買い切り型への移行を組み合わせることで、月額固定費を構造的にゼロ化することもできます。

ただし、セキュリティ認証が必要な業務・API連携が頻繁に変わる業務・24時間サポートが必要な業務は、SaaS継続のほうがトータルコストで優位です。

「SaaSを全部解約する」ではなく「使うべきSaaSと代替すべきSaaSを切り分ける」という発想が、長期的なコスト構造改善につながります。

AIzenでは、現在ご契約中のSaaSの利用実態を診断し、買い切り型の自社専用ツールへの移行で月額固定費をゼロ化する提案を無料で承っております。SaaSコストの見直しや代替ツール導入のご相談はお気軽にどうぞ。

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この記事を書いた人

ITコンサル・SEとして経営層直下での全社横断プロジェクトを多数主導。経営課題を起点としたKPI設計、ROI最適化、プロジェクトガバナンスの構築に精通。単なるシステム導入に留まらず、BIツールを用いた意思決定支援や、属人化を排除するBPR(業務再設計)を通じて、再現性のある事業基盤の構築を得意とする。「経営層のビジョン」を「現場のオペレーション」へと翻訳し、データドリブンな組織変革を支援している。

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